鹿児島市生まれ。福岡県糸島市在住。
九州大学理学部生物学科卒業。11歳のとき、両肩を大型犬に噛まれ、その傷の影響で肩、指に障がいを持つ。20年以上の歳月をかけ、気功治療などを続けながら、オリジナル曲の創作活動を開始。作曲は独学。ピアノのタッチについても、障がいを克服するため、ほぼ独学で独自の奏法を探し続けている。そこから作りだされる音は、豊かな、独特な響き、世界観を醸し出し、他では聴けないものと評される。また『歌うピアノ』と評される。
また、演奏の真剣さとは、全く異なるギャップの爆笑トークを交えるスタイルで、全国各地で、ホールコンサートを多数開催。また、福岡・糸島の自宅スタジオでは、こだわりぬいた音響と、自分の音に作り上げている相棒(=ピアノ)を使った音の空間を体感して頂きたいと、「自宅スタジオコンサート」を継続開催している。一方、ニューヨークに単身渡航。アポなしで、つたない英語を駆使し、ライブハウスに飛び入り出演。大喝采を浴びる。そのユニークなキャラクターゆえに、ラジオ番組出演の際にも、「異色の音楽家」と紹介される。
曲は、詩情豊かな曲から、大迫力の躍動感あふれるものまで幅広く、会場を大きなエネルギーの渦に巻き込み、はじめてコンサートを体験した方の殆どから、驚きとともに、気分がスッキリした、元気がでた、との感想を多数寄せられている。障害をかかえての活動は、西日本新聞には、以前から、たびたび取り上げられたが、南日本新聞のコラム「南点」に「奇跡のピアニスト」として、掲載された。ふざけることが三度のごはんと同じくらい好きなO型魚座。
南日本新聞
奇跡のピアニスト
文筆家 西 みやび
鹿児島市出身で、福岡県系島市在住のピアニスト・空音唱=本名・岸美恵子=さん(59)。
作曲や音楽プロデュースも手掛け、「異色の音楽家」といわれる彼女と出会ったのは、2014年8月、音楽とお酒をこよなく愛する人々が集う店、鹿児島市天文館の「スピークイージー」でのミニコンサートだった。
空音さんは幼少の頃からピアノを習っていたが、11歳のときに秋田犬に両肩をかまれ、その傷の影響で肩と指に障害を持つようになった。鶴丸高校から九州大学理学部に進学し、卒業後は製薬会社に勤務したが、音楽への道をあきらめきれずに退社。
しかし熱い想いとは裏腹に、指先の感覚は日を増すごとになくなっていった。
結婚を機に、そんな彼女を支えてくれたのは、ご主人の達雄さんだった。音楽を続けることに対して一番の理解者だった達雄さんは、空音さんに気功治療をすすめ、大丈夫だからと言いながら毎日マッサージを続けてくれた。
空音さんは、作曲は独学、ピアノも障害から独自の奏法になる。でも、逆にそれが「空音唱の世界」をつくり出している。
「ふざけることが3度のメシと同じぐらい好き」と自ら言うように、コンサートはいつも驚きと感動と笑いの渦に包まれる。
達雄さんは2年前の夏、海に出たまま帰らぬ人となった。享年64歳。空音さんは深い悲しみをバネに、その後も東京・府中の森芸術劇場をはじめ、いくつものコンサートを実現させた。
先日、彼女のこれまでの集大成ともいえる福岡天神・エG ホールでのコンサートに行って
きた。この日のために心を込め て用意した新曲は「エール!」と、大切な人を亡くした同じような境遇の人に贈る「いつか会えるね」。
明日こそはきっといい日が訪れると信じて、ピアノに向かい続ける空音さん。「歌うピアノ」といわれる彼女が紡ぎだすメロディーは人間に不可能はないと教えてくれているようだ。